こんな能力なんていらなかった—鳥籠の中の鳥は愛を詩う—



「おい……フィオ!おまっどこ行く気だ!?」


 むんずと娘のローブのフードを掴み、持ち上げる。


「あそこに見たことない鳥が……」

「お前が行かなくても、向こうから勝手に寄ってくるだろ?」


 全くの言う通りで、その鳥は真っ直ぐフィリアムの元に飛んできて、肩にちょこんと止まった。


「綺麗な鳥ね……まるでフィオの目みたい」

「お母さんそれは言い過ぎ。私の目はこの鳥と同じ色ってだけでこんな綺麗じゃないよ」


 フィリアムの肩口で可愛らしく囀る鳥の頭を指の腹で撫でてやれば、気持ち良さげにすり寄っている。確かに青と緑の美しい鳥ではある。

 だが、フィリアムの言は真ではない。


「……なぁに、言ってんだか」


 小鳥とじゃれ合うフィリアムに呆れた声で言う。


「フィオの目はもっと綺麗だよ」

「……親バカ?」


 照れ臭いのか憎まれ口を叩いてくる娘に少し笑う。


「本当の話だ。お前の目は本当に綺麗だよ。なぁ、ラナ?」

「セルファの言う通りよ。フィオ」


 母は父に同調して、頷く。


「でも、隠せって言うじゃん?」


 別になんてこともない、という風を装ってはいるが、若干拗ねが混じってる。上手く隠しているつもりなのだろうが、まだまだ甘い。


「誰もが綺麗だと思う美しい瞳をしているのよ。でも、その瞳は特別な意味を持っているから隠しているだけなの」


 セルファの代わりにラナが答えた。



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