こんな能力なんていらなかった—鳥籠の中の鳥は愛を詩う—




「とても、希少な、な。俺はそれがいるところを一つしか知らない。見た回数も両の手で足りるほどだ」

「綺麗?」


 思わず言葉に詰まった。ピーコックは綺麗だ。美しく気高い鳥。
 だが、すぐ頷くには、あの光景が邪魔をする。


「ああ……」

「この鳥よりも?」

「比べものにならない」

「そうなんだ?いいなぁお父さんは見たことがあるんでしょ?」

「……」

「いつか見てみたいなぁ」


 無邪気にいつか、と思いを口に出すフィリアムに、それだけは見せられないと言えるわけも無く。


「……見られるといいな」


 なんて偽りの科白を吐いた。
 
 心の奥底ではそれだけは阻止することを誓いながら。


「ぅわっ!?」


 フィリアムの驚いた声に顔を上げると、丁度エアリエルがフィリアムの頭に止まった所だった。

 エアリエルに驚いて、青い小さな鳥は慌ただしく飛んで逃げた。
 普段なら残念がる所なのだろうが、フィリアムはそんな素振り見せない。
 そのような余裕はないことを理解しているからだ。


《ここから少し先、男が一人》


 フィリアムは瞬時にパッと自身の姿を変えた。
 長かった銀髪は茶色で短く。青緑の目は、ただの茶色に。どこにでもいる普通の子供だ。ちょっと顔が綺麗すぎるが。


「お父さんどう?できてる?」


 心配そうなフィリアムの頭をくしゃりと撫でて、完璧だ、と答えてやれば、やや照れて嬉しそうな顔をする。


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