こんな能力なんていらなかった—鳥籠の中の鳥は愛を詩う—
ただ綺麗なだけだった宝石が、年を重ねるうちに、不可思議な空気を纏い、見た者を狂わせる——そのような存在に。
それからだ。フィリアムの魔力に変化が起きたのは。
「お父さん?」
「セルファ?」
母娘二人に心配そうな顔をされて、昔に飛んでいた頭を今に戻す。
「なんでもないよ」
「そう……?」
「そうだ」
そう言ってくしゃりと撫でれば、フィリアムは照れ臭そうに破顔する。
その顔にさっきまで浮かんでいた心配の色はない。
人を疑うことを知らない——まだまだ可愛い我が愛しの愛娘。
俺はいつまでこいつを護れるだろうか——……
いつまでも撫で続ける手に嫌気が差したのか、娘は眉根を寄せはセルファの腕の中からするりと抜け出した。
しかし、それを悲しいとも思わなかった。
……きっと。
フィリアムは近いうちに誰の手も必要としなくなるだろう。
二年間みっちり扱いた。他の誰でもないこの自分が。もう、今では、大人を凌ぐほどの知恵も知識も持っている。
だが、精神は余りにも未熟。まだまだガキと同じ。
誰に頼らずとも一人で乗り越えていける——その時まで、こいつを護るのが俺の役目なのだ。
早く成長してくれと懇願する一方で、ゆっくり大人になって欲しいとも思う。子供時代が長ければ長いだけ、フィリアムのことを護っていられる時間が長くなるのだから。