こんな能力なんていらなかった—鳥籠の中の鳥は愛を詩う—
実は今いる場所は深い深い森の中。エスニアの森ほどではないが、それなりにデカい。
木こりはニヤリと笑った。その質問の意味を正確に理解したらしい。
「入れるのか?」
「……こんなとこにいるんだ。それぐらい分かるだろう?」
木こりはだよなぁ、と呟くと薪を集め始める。どうやら案内してくれるようだ。
そしてそれを一纏めにすると、男は広い背に担いだ。その時、ベストの裾からチラと見えたものに目を奪われる。木こりは前を向いていてセルファの視線には気が付いていない。
「お父さん?行っちゃうよ」
「あ……ああ」
フィリアムの言うとおり男はいつの間にかだいぶ先を行っていた。
頭を振って切り替える。今は男に黙ってついていく。詮索はその後だ。
男は慣れた動きで森中を進んでゆく。
自分達はなんなく着いていけるが、普通の人間はこうはいかないだろう。
と、その足が不意に止まった。
「……ここか?」
「ああ、そうだ」
目の前はただの森。だが、森守と同じ結界が張られているはずだ。それも、分厚い。
「お嬢ちゃん」
フィリアムが指で自分のことを指す。木こりはそのジェスチャに頷く。
「そうそう、あんただお嬢ちゃん」
「私が、なに?」
「目一杯空気ためとけよ?」
「へ——え!?」