こんな能力なんていらなかった—鳥籠の中の鳥は愛を詩う—



「まぁまぁ、フィオ、あなたのためだったんだからそんな言わなくても」

「奥方は話がわかるな」


 木こりははははと笑うと一瞬嬉しそうな顔をした。


「……おい、やらんぞ」

「なんのことだ?」


 木こりはニヤリと笑う——気付いてやがる。

 ラナを隠すように立つ。と、それを面白がる。既視感がすごい。


「——で、いつまでここにいるつもりだ?」


 隠しきれなかった棘に木こりはまた笑う。しかも堪えきれなかったかのように。


「じゃあ、行くか……ククッ」


 笑いながら木こりは壁沿いに歩き出した。

 フィリアムはいつの間にかセルファの横にいた。そうしてこっそりと言った感じで訊ねてくる。


「どこに向かってるの?この塀越えればいいだけじゃないの?」


 簡単に飛び越えればいいんじゃない?とか言ってくれちゃう娘を見ながら思う。
 上が見えないほどの高さはある壁を、どうやって飛び越えるつもりなのか。


「嬢ちゃん……越えるのは流石に無理かなー」


 木こりも若干引き気味だ。当たり前だ。


「えー」

「言ってなかったが、この塀を通り抜けようとしたらお前黒焦げだぞ」

「へ?」

「まぁ、中入れば分かるかな」


 フィリアムはとりあえずふぅんと呟いていた。
 フィリアムは昔と比べて聞き分けがよくなった。今だってほんとは知りたくて仕方ないだろうに、黙ってる。
 今聞かない方がフィリアムにとっていいことだと分かっているのだ。


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