こんな能力なんていらなかった—鳥籠の中の鳥は愛を詩う—
セルファがフィリアムのために怪我を負ってから、そこらをやけに気にするようになった。
ありがたいっちゃありがたいが、少しだけ残念にも思う。それは、同時に子供の時にしかやれない無茶をしてないということになるのだから。
だが、やはり危ないことはしてもらいたくない。
いつまでたっても天邪鬼な心。自分は結局フィリアムにどうなってもらいたいのか。
「あ……見えた見えた」
木こりの言うとおり、大層な門が見えてきた。
木こりの声はなんだか残念そうだ。まるでイタズラが気付かれなかった子供のように。
「すごい……」
フィリアムが漏らした一言が全てを物語っていた。
異様な存在感。
塀の上まで届くその扉は、100人もの人間が力を合わせても開かない。
と、門の前に立っていた門兵が、こちらに気が付いたかと思えば、持っていたサーベルを向ける。
「——名を述べよ」
妙な迫力にフィリアムがセルファの服の裾をぎゅうっと掴む。
怖いのか、と少し笑ったら背中の肉を抓られた。なんてことしやがる。
「セルファ・ケルト・ダウンマリー。あと、妻のラナと娘のフィリアムだ」
「本日の出国者の中にそのような名はいない。早急にこの場から立ち去ることだ」
有無を言わさない堅い口調に流石のせるふぁも面食らう。
「おいおい……俺らの希望はガン無視か」
「国民の紹介書があれば、入国は可能だ。住むとなれば審査が必要だが」
「はぁ!?」