こんな能力なんていらなかった—鳥籠の中の鳥は愛を詩う—




「……久しぶりだな」

「ああ」


 懐かしい、その思いが心を占めた時、服の裾をひかれて現実に舞い戻る。
 犯人はフィリアムだった。力を込めるうちに無意識のうちに引っ張ってしまったらしい。
 フィリアムだけがこの状況を理解してないのが悔しいのだろう。尖った口先を見れば分かる。
 頭を軽く叩いてやれば、見られていたと思ってなかったのか顔を赤くさせて俯いた。


「それにしても、すっかり老けたなぁ、親父臭くなりおって」

「そんなのお互い様だろう?」


 笑ってどつかれる。
 そんな親密な様子に門兵の口は唖然と開かれていた。
 自分の立場をすぐに忘れてしまうこと、それがこいつの悪いとこだ。


「おいおい、威厳のある姿見せとかないと民に示しつかねぇぞ」


 ラマは明らかに不機嫌そうな顔になる。だが、分かったと呟いて懐に手を差し入れた。


「そこのお前。これをやろう」


 門兵はサッと近寄り、拝見いたします、と口早に言う。


「それでこいつらはここに入れるであろう?」

「おめぇ……旧来の友人に対してこいつらって」

「早く門を開けよ」

「はっ!!」


 完全に無視された。

 門兵二人が慌ただしく動き始める。
 ここからが実は長い——のだが、何故か目の前の戸が動き始める。
 この巨大な門はある理由から開くことができない。
 では、どうやって中に入るのかというと、この門の下に大の大人一人が通れるほどの小さな扉があるのだ。



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