こんな能力なんていらなかった—鳥籠の中の鳥は愛を詩う—
何でこんなにも明るいの……?
近づけば近づくほどその光に違和感を感じる。
そして、その光が赤色なのだと気付く。
赤い光……?
意味がわからない。
今は夜で。
一瞬朝焼けかと思ったが、太陽が登るのは自分の右からだ。この方角ではない。
《着いたわ。ほら見て?》
そう言われる前にフィリアムはしっかりとその光景を見ていた。
家が燃え、白い粒子が空に舞い上がるその幻想的な光景を。
突然思い出した。飼っていた魚が死んでしまった時の光景を。
泣いていた自分の前で、その魚から白い粒子が溢れ出し、空に昇っていったのだ。
——マナが空に還ってるんだ
——……マナってなぁに?
——マナって言うのは、この世界に生きる者全てが持っている生命力……みたいなものだ。皆マナによって生かされ、死ぬとマナは空へと還る
——このマナが世界に還ることで新しい命が生まれてくるのよ
——だから、ちゃんと見送ってあげるんだよ
——うん……わかった
目の前に広がる豪火から立ち上る黒い煙の中に紛れて、白い光は空へと還っていた。
それらがすべて町の人のマナだと言うことに気がついて、フィリアムは地面に膝をついた。
「ああ……うわあああああ」
泣き声とも叫び声ともつかない、その声に隣人達は初めてたじろぐ。