だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
時間はもう十八時を過ぎていた。
まだ太陽は空を明るくしていたけれど、そろそろお腹も空いてきた。
「森川、ご飯どうする?」
「あぁ、もうそんな時間か」
「夢中になってたもんね。お腹空いたから何か食べに行かない?」
森川が頷くのを見て、二人でご飯を食べに行くことにした。
どこか行きたいところはあるか、と聞かれたけれど特別思いつかなかったので、結局いつもの居酒屋さんに足を伸ばすことにした。
ここからは地下鉄で二駅しか離れていないので、すぐに着くだろう。
日曜日の夜なので、そこまで混んでいないことを願って。
そして、今日はきっと色んなことを話すことになるだろう。
森川とする話は、別に仕事の話ばかりではない。
最初の頃は、森川の色恋についての相談だって結構あったのだ。
前の彼女の話とか、別れることになった時の辛い部分だったりとか。
まぁ、結局は森川自身が原因ではあったにしろ、だ。
代わりになってあげることは出来なかったけれど、それでも傍にいてあげることくらいは出来たから。
泣きたくても泣けない男の人は、ただひたすらお酒を煽り続けるしかない、という苦しさを持っていた。
その姿は痛々しくて、放っておける訳もなかった。
何を話すでもなく。
ただお酒を作って、一緒に飲み続けてあげることが、私に出来る唯一のことだったから。