だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版





私だって、それなりに色々あったけれど、どれも真剣に考えたりはしていなかった。

だから、森川のように真剣になれる恋愛に憧れたりもしたものだ。


それでも何となく付き合って、何となく抱き合って、その度自分から距離を取っていった。

真剣に気持ちをぶつけ合うことも、真剣に気持ちを受け取ってあげることも出来ない自分が森川と重なって。

森川の意見に同調してあげられることは多かった。



女として想う彼女の気持ちも、その時の森川の気持ちもどちらもわかるからこそ。

その時の二人が話し合える距離にいることを、とても羨ましく思った。

その距離がどれだけ大切なものなのかを、理解してもらうことは出来なかったけれど。



傍にいて顔を合わせられる、という距離の尊さを本当は知って欲しかったのだ。



それを伝えるのは、実は私にとっては苦手分野で。

それを伝えたことさえ、私にとってはとても大きな一歩だったのだ。



それからかもしれない。

こんな風に、森川になら話してもいい、森川に話を聞いて欲しい、と想うようになったのは。



自分が一番考えていることは、人には言わずにいることが多かった。

それは小さな頃からの習慣で、自分で何とかしなくてはいけなかったからだ。




けれど、それも限界だろう。

今日、森川から何か質問をされたなら。

私はそれに対して、ありのままの自分の考えを伝えるのだろう。



森川が純粋に疑問をぶつけてくることは明らかだったから。


森川がどんな答えをくれるのか、少しだけ不安になりながらお店までの道を歩いた。




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