だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
空蝉...ウツセミ
十二歳の夏。
私は真っ白なミニのワンピースに紺色のサンダルを履いていた。
中学に入って初めての夏休みに、同級生の男の子に近くの公園まで来て欲しい、と友達伝いに聞いた。
私は行きたくない、と何度も言ったのに結局は『来るまでで待ってる』という言葉に負けて向かうことにした。
この照りつける太陽の下、長い時間外にいたら倒れてしまうのではないか、と心配になってしまったからだ。
男の子の名前は聞いたことがあった。
でも、顔だけ思い出してすぐに忘れてしまった。
同じ小学校だったけれど、クラスが一緒になったのは初めてだ。
中学生になった途端、『恋愛感情』という言葉が自分の周りに聞こえてきた。
誰が誰を好き、とか。
その言葉達が蔓延した学校では、あちらこちらで告白の現場を目撃することとなった。
まさかそんなことに、自分が巻き込まれるなんて。
公園に着くと、背の高い影が見えた。
同じ学年で私と身長の変わらない男子なんて珍しい。
思い出した顔は間違いではなかった。
この子、こんなに身長が大きかったかな、と考えていた。
程よく日焼けした肌は、真っ白な私の肌とは対照的だった。
白地のTシャツと赤いチェックの半袖の襟付きシャツを上手に着こなす姿を見て、きっとモテるんだろうな、と思った。