だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
「ごめん、突然」
本当に申し訳ないという顔で私を見つめる。
緊張からか笑顔がとてもぎこちない。
「ううん。優希から電話きた時はびっくりしたけど」
そうだよね、とちょっと困ったように笑う。
こういう笑い方をなんて表現したらいいのか、表す言葉を私は持っていなかった。
ただ、なんだかその顔が泣きそうに見えて、私はたまらなく申し訳ない気持ちになった。
けれど、その事を思っているときも私の顔は無表情のままだった気がする。
こういう時にどんな顔をしていいのか、私にはわからなかった。
「もう少し、時間大丈夫?良かったらベンチに座らない?」
「あ、うん。大丈夫」
せっかく促してくれたのにそれを断るのも気がひけて、私達は並んでベンチに腰掛けた。
二人の間にはもう一人座れるくらいのスペースが空いていた。
座ると同時に、私は肩にかけていた大きなかご状の鞄からしっかりと冷えたペットボトルを取り出した。
冷蔵庫から出されて水滴が沢山つくことを予想して、タオルに巻かれたそれは、思ったよりもぬるくはなっていなかった。
するりとタオルをはがして、一本を男の子に手渡す。
「暑い中、待たせちゃったから。まだ冷たいから飲んで」
「え!あ、ありがとう・・・」