だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
「僕、山本のことがずっと好きだったんだ」
「・・・っ!」
「友達なんて想えなくて、せっかく同じクラスになったら余計に意識して、さ・・・」
「石田、くん・・・」
名前を呼ぶと、一度言葉を切って俯いてしまった。
そしてもう一度顔を上げた。
その時、目の前の人物は『男の子』から『彼』と呼ぶにふさわしい顔つきになっていた。
「山本、好きだ。ずっと、好きだった」
真剣だった顔がゆるりと笑顔に変わる。
やっと言えた、というように。
その顔を見て、どうしていいかわからなくなった。
「僕がこう想ってるってこと。それだけは、知ってて欲しかったんだ」
貰った言葉に返事を返さなくてはいけないのかな。
私を見つめる瞳は優しくて、何も言わないままでいた。
さわさわと揺れる木の音を聞いて、このままでいいのかな、と考えていた。
「山本が僕のことを好きじゃないのは知ってるよ」
「え・・・。じゃあ、なんて・・・?」
「ごめん。だけど、言わずにいられなかったんだ。だから、返事を聞かせてくれるかな」
年齢よりもませた物言いは、私をとても苦しくさせた。
やっぱり返事が必要なことなんだ、と想い知らされたから。
でも、私がこの気持ちに応えられない以上、きちんと伝える必要があるのだと、しっかりと理解できた。