だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
「----な、さいっ――――」
「時雨?」
「ごめん、な・・・さぃ、石田く、んっ」
「時雨・・・」
「あぁぁぁぁっ!うわぁぁぁっっ!!」
苦しくて息が出来ないほど泣いた。
ごめんなさい。
ごめなんさい。
そればかりを繰り返して。
応えられないことは、苦しいことなのだと知ったから。
人を傷付けることが、こんなに辛いものだと知ったから。
私が声を上げる度、何度も湊は頭と背中を撫でてくれた。
晴れた夏の昼間には、蝉の声がうるさいほど響いていた。
空には少しの雲と深い青が広がっていた。
眩しく照りつける太陽は、大きな木の葉に遮られて時折私に降り注ぐ。
木陰にいるのに暑さを感じるほど、今日は天気がいい。
少し落ち着きを取り戻して、湊の顔を見上げる。
変わらぬ笑顔でそこいる湊を見て、やっぱり涙がこぼれた。
湊の冷たい指が、その涙を優しく掬ってくれた。
ふと、空を見上げるように湊が上を向いた。
湊の頬に何かがポツリと当たって光る。
涙?
違う。
雨?
でも、こんなに晴れているのに?
もう一度こちらを向いた湊の頬には、水滴が一粒光っていた。
「・・・湊?」
そっと見上げると、私の頬にもぽつりと水滴が落ちてきた。
私を見る湊が嬉しそうに笑う。
その顔を見て確信した。
湊の好きな雨が降っているのだ、と。