だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版





にっこりと笑う湊の顔。

それを見て、ほんの少し笑って見せた。



雨は少し静かになってきていた。

傘に当たる音が、少しずつ少なくなっていた。



もう、いいかな。



真っ直ぐに湊の目を見ていた。

長く揺れる睫毛がとても綺麗だった。





「湊が好き」





そう言うと湊は少し驚いた顔をした。

けれど、すぐ笑顔に戻った。




「僕も時雨が大好きだよ」




いつもと同じトーンで言う湊。

その言葉に私は首を振った。


今伝えたいのは、そんなことじゃない、というように。




「湊のことをずっと見てたよ」


「うん」


「それは憧れから、違うものになったの」


「うん」


「お兄ちゃんじゃ、嫌だよ。時雨の傍に、ずっといて」


「時雨・・・」




湊は笑っていた。

その顔は、いつもとやっぱり変わらなくて。


私は何も伝わっていないような気がして、どんどん不安になった。

それでも、伝えたいと思った。



そして、笑った。




「湊が、好き。大好き」




響いた言葉。

雨はもう上がっていた。



湊が私から手を離して、ぱんっと傘の水を払った。

折りたたみ傘を綺麗にたたんで、袋の中に入れなおす。



離された私の身体は、熱を失ったようだった。

ただ、湊の一挙一動を見つめていた。




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