だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
「それでも、このままでいいわけじゃないのもわかってるよ」
「あぁ」
「ただ、すぐに返事を出来ることじゃないから」
「そうだな」
「考えてることも、想っていることも。伝えないとね」
そう言って伏せていた目線をあげる。
誰かに伝える、ということは気持ちを固めるということだ、と思った。
森川を見据えた時、私は色んなことを少しずつ整理出来てきたのだ、と感じた。
「櫻井さんと、ゆっくり話すよ」
言葉にすると、それは胸にすとんと落ちた。
そして、そんな当然のことから一ヶ月も逃げていたことを心から後悔した。
もっと早く向き合ってあげなくてはいけなかったのに。
それをズルズルと先伸ばしにしていた。
「それがいい。自分一人で想っていることは、口にしないと相手には伝わらない。理解してもらえなくてもいい。ちゃんと話してみろ」
想っていることも、行動も、多分色んなことが矛盾するだろう。
それでも、一度ゆっくり伝えなくてはいけない。
湊のこともきっと聞かれるだろう。
その時に冷静に答えられる自信はないけれど、櫻井さんにはそれを知る権利があるのかもしれない。
だって、こんなにも。
私の気持ちを動かしてくれた人だから。