だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
「会いたい時に会えないのはいやだ、って言われちゃって。せめて連絡くらい入れてくれって」
「そう」
「俺は忙しくて連絡どころじゃないんですよ。でも、別に相手のことを考えてないわけじゃなくて」
「うん」
「どうしてやればいいか、わかんなくなりそうです・・・」
「松山・・・」
松山は下を向いて小さくため息をついた。
いつも元気な松山の顔が少しだけ翳る。
「あっ!すいません!俺自身のことなのに、こんなにベラベラと!」
言った顔は困ったように笑っていた。
松山の彼女は、確か公務員のはずだ。
大学を卒業したばかりの彼女。
去年からずっと忙しかった松山に、ずっと不満はあっただろう。
社会人になって、さらに松山に相談したいことは増えるはずだ。
会いたい時に会えない。
それはきっと、彼女にとってとても辛いことだろう。
「確かに今は忙しいし、それをわかってもらうのは簡単じゃないよ。でも、伝える努力をしないと伝わらないよ」
私がゆっくり言うと、松山は驚いた顔をしていた。
それを見て私もきょとんとしてしまう。
何か変なことを言っただろうか。
松山を見つめて小さく首を傾げてみると、ふわりと松山が笑う。
そのあどけない顔を見て、いつもの松山だ、と想って安心した。