だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
「ご馳走様でした。本当におごってもらって、すみません」
「いいよ、気にしなくて。その代わり、午後からもしっかり働いてもらいますからね」
「了解しました!じゃあ、色々教えてくださいね」
「もちろん。苦手なことは克服しないとね」
「ハハハ・・・、そうですね」
松山のそんな乾いた声とともに店を出る。
外の日差しよりも松山の方がずっと眩しく見える。
元気になった姿を見て、少しほっとした。
プライベートのことでしてあげられることは殆どないけれど、たまにこうやって連れ出してあげるだけでいいのかもしれない。
話を聞いて、頷いて。
そしてほんの少しだけ、背中を押してあげられたら。
可愛い後輩たちには、幸せになって欲しいから。
そう思って横目に松山を見ていた。
顔を上げて真っ青な空を見る。
今日も雲は見えなくて、じりじりとした熱さが地上にこもる。
森川と出掛けた日曜日。
あれからすぐに忙しくなってしまって、櫻井さんと話す機会を作れずにいた。
今はもう八月。
もうすぐお盆がやってくる。
今年も忙しく仕事をしていることになりそうだ、と思った。