だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
眩暈...メマイ
午後からは仕事に没頭していたせいか、時間があっという間に過ぎていた。
時折、松山が質問に来るのを丁寧に答えて、営業に質問に来る他部署の社員に書類を渡したりしていた。
立ち上がる度にめまいに襲われる。
それを表に出したら、この忙しい中で心配をさせてしまうので、出来るだけ平気なフリをしていた。
夕方が近づくに連れてどんどん具合が悪くなっていったけれど、座っていれば何とか仕事は出来そうだった。
少しずつ指先や身体が冷えていく感覚を何とかしなくては、と温かい物を飲もうと思ったりもした。
ただ、給湯室までの道のりさえ、今の私には過酷なものだった。
どうすることも出来ないまま、とりあえず目の前の仕事を片付ける。
気付けばもう午後七時。
そろそろ全員がオフィスに戻ってくる時間だった。
必死にパソコンに向かっていると、ことんとマグカップが机に置かれる。
白とオレンジのチェック柄の私のマグ。
「これでも飲んで、少し休みなさい。温まるわよ」
「水鳥さん。・・・すいません」
水鳥さんがそっと隣の櫻井さんの椅子に腰掛ける。
今日一日、尾上部長の営業同行で水鳥さんは終日外出をしていた。
心配そうに私を見て、ひざかけを掛けてくれる。
「今日、体調悪いんでしょう?生理の時に無理するといいことないわよ」
「やっぱり、分かります?」
「分かるわよ。まぁ、私くらいでしょうけど。気付くのなんて」