だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
温かくなった身体は、何とか席から立ち上がることが出来そうだった。
飲み終わったココアのカップを洗いに行くために、立ち上がった。
「――――――っっ!」
ぐっと力を入れて机を掴む。
もちろん、周りには気付かれないように。
立ち上がると貧血からくるめまいがまだ続いていた。
でも、ここで座り直すと変に心配をかけてしまいそうだったので、ゆっくりと歩き出す。
給湯室に行ったら少し休もう、と思いながらオフィスを抜け出した。
足元は少しおぼつかないけれど、ゆっくり歩けば大丈夫そうだった。
いつもならすぐに着く給湯室も、今日に限ってとても遠い場所だ。
ココアを飲んだので薬を飲むこともできそうだ。
オフィスに戻ったらすぐに薬を飲もう、と決めた。
給湯室でカップを洗う。
手に当たる温かいお湯が、とても心地よい。
身体が冷えているせいで私の手は真っ白になっていた。
ということは、顔色もきっと良くないんだろう。
今やっている資料を作ったら、今日は早々に帰ろう、と思いながらカップを拭いていた。
ふと上を向くと、目の前が真っ白になってしまった。
ガタッと音を立てて、膝が床に着く。
まずは落ち着かせなくては、と思うのに目の前で白い光が点滅している。
シンクの端にしがみついて、ぎゅっと目をつぶる。
めまいは治まるどころか、ぐるぐると世界を揺らし続けていた。