だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
――――――吐きそう――――――
けれど、ずっとここにいるわけにもいかない。
でも、今はどうすることも出来ない。
もっと早く薬を飲んでおけばよかった、と後悔しながら、何で男に生まれなかったのだろう、とどうでもいいことばかり考えていた。
廊下から給湯室に足音が近づいてくる。
こんなところを誰かに見られては、と必死に立ちあがろうとする。
そんなことは無駄な抵抗だとわかっていても。
ガチャリ、とドアの開く音がする。
給湯室の入り口を見ようと顔を上げた時には、私のすぐ近くに櫻井さんがいた。
私を抱えるようにして。
「やっぱりか」
「・・・さ、くらいさ・・・」
「お前、今日ずっと体調悪かったんだろ。顔色が悪すぎる」
この人は、どうして。
なんだってこんなタイミングで駆けつけてくるんだろう。
その理由はもはや明白で、私は何も言えなくなってしまった。
眩暈がするほど、この人の気持ちを強く感じてしまっていた。
「すみません・・・。あ、でも薬飲めば・・・落ち着く、と思うので」
そう言って少しだけ笑って見せる。
そんなことに意味がないのは十分わかっていた。
それでも、そうしないといけないような気がしていた。
「お前、それ本気で言ってるか?」
驚くほど冷たい声。
思わず笑った顔が強張るほど強いその声に、櫻井さんの顔を見ずにはいられなかった。