だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
夜ご飯を食べて二人で車に乗り込んだ。
夕闇も夜の帳(とばり)に包まれていた。
少し低い雲に覆われた空は、いつ泣き出してもおかしくなかった。
エンジンをかけて車が動き出す。
助手席に乗るのが好きになったのは、運転している間、ずっと湊の横顔を見つめていられるからだと想う。
見つめた先のその横顔は、対向車線の車の光を浴びてなんだか神秘的だった。
家まではここから一時間半くらい。
今日はお父さんとママは早い夏休みだ、と言って旅行へ言っている。
二人は同じ病院に勤めていて、毎年一週間程度の夏休みを一緒にとる。
前半は二人で旅行へ、お盆になるとみんなでお墓参りに行くことになっている。
広告代理店が忙しい業務なのは、高校生になって少しずつわかってきたけれど、湊はきちんとお盆休みを貰っていた。
『僕の仕事は、家にいても出来ることが多いから』
そう言って、にっこり笑っていた。
確かに、お昼間は電話をしながらパソコンに向かっている事がほとんどだ。
家で出来ないことがあるときは、会社に行くこともあった。
それでも時間を見つけては、二人で出掛けたりすることが出来た。
そうしてくれる湊の優しさが、とても嬉しかった。