だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
「日に日に『女』になっていく時雨を、追いかけて行く事すら出来ない」
「湊・・・」
「人目に触れさせるのさえ嫌だ。俺のいないところで、知らない男がお前を見るなんて、嫌だ。」
「そんな・・・」
湊が滅茶苦茶なことを言っている。
でも、それは私の持っている気持ちと同じだ、と想って嬉しくなる。
私ばかりが求めていると、想っていた。
私ばかりが、好きになっているのだと。
同じ気持ちでいられることが、こんなにも嬉しい。
怖さではなく、嬉しさがこみ上げる。
嬉しくて涙が止まらない。
抱き締められている力が、ここに湊がいることを教えてくれている。
もう、触れられずにはいられない。
玄関で貪るようにキスをした。
今まで以上に、深く繋がるように。
苦しくて息が出来なくなっても、湊は離してはくれなかった。
余裕のない湊の唇に、必死に応えていた。
唇を離すことが出来なくて、でも立っていることも出来なくなってきた。
湊はそのまま私を抱え上げた。
歩くたびに触れる唇に、自分と湊の境目さえ見失いそうだった。
一段ずつ階段を上る。
その揺れが身体に伝わる。
私の心臓の音ばかりが、響いていた。