だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
境界線...キョウカイセン
湊の部屋は、この人の匂いがした。
電気も付けず、湊は私をそっとベッドに横たえた。
ベッドが軋む音がする。
さっきよりずっと長く、ずっと深く唇が重なる。
私の身体に湊の重みが重なる。
湊の両手が、私の顔を掴んで離さない。
少し唇が離れ見つめ合う。
頬にある手をぎゅっと握り締めた。
湊の冷たい手が。
今。
ここにある。
「湊・・・、好き」
目の端からは涙が止まらない。
もう、好きで、好きで。
好きになり過ぎて。
私が言った言葉を聴いて、湊は固まってしまった。
それだけで不安になってしまう。
私は、また何か、変なことを言ってしまったのだろうか。
「時雨・・・。俺、優しくできる自信がない」
湊は、とても辛そうな顔をしていた。
そっと私の輪郭をなぞるように、優しく触れながら。
「初めてなのに・・・、ごめん」
そう言って、私に返事をさせない、とでも言うようにキスをした。
湊の冷たい指が、少しずつ私の素肌に触れる。
その度に身体が反応する。
息が上がる。
こんな声、知らなかった。
こんな感覚も、知らなかった。
湊の触れたすべての箇所が熱い。
身体中が溶けるように、どんどん体温があがる。