だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
雨の音が静かに部屋に響いている。
目を覚ました時、私は湊の腕の中にすっぽりと包まれていた。
眠い目を少し開ける。
そこには、優しく笑う湊がいた。
「起きた?」
「・・・ん」
「辛くない?」
声の響きが違う。
その声だけで幸せになれる、と想った。
湊が、私の身体をそっと撫でながら、問いかけた。
ふるふると首を振って大丈夫、と答える。
自分の身体だけれど、自分の物ではないようで、少し変な感覚だった。
ただ、その違和感が自分が女であることを証明してくれるようだった。
思わず笑う。
にっこりと、湊を見つめたままで。
その顔を見た湊は優しくキスをくれた。
「時雨は綺麗になり過ぎた。嫌だな、二学期が始まるの」
「なぁに、ソレ」
拗ねたような言葉が、私の胸をくすぐる。
普段感情を表に出さない湊。
その湊が私の前だけで見せる顔があることを、今日改めて知った。
「でも、今日からは湊だけのものだよ」
そう言う私を見て、湊は満面の笑みを浮かべた。
当たり前だ、と言う代わりに瞼にキスをくれた。