だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
「涼雨。夏の終わりに涼しさをもたらす雨。けれど、切なさも一緒に降らせてしまう雨」
リョウウ。
こんなに近くにいて、こんなに傍に感じるのに、どうしてこんなにも切ないのだろう。
湊が言葉を発する度に、泣きたい気持ちになる。
その綺麗な言葉達が積もる度に、湊を理解できるはずなのに。
肩を抱かれたまま、湊の胸にしっかりと顔を埋める。
出来る限り近づけるように、ぴったりと寄り添うような形になった。
そうすると湊は、私をすっぽりと包んで抱き締めてくれた。
「どうしたの?」
「こんなに切ない雨は、初めて。湊が此処にいることを、確かめたくなったの」
「甘えんぼ」
「そうだよ。ダメ?」
素直にそう言った私に驚いたようで、湊は一瞬言葉に詰まっていた。
前は恥ずかしくて言えなかったことも、今は全部伝えたいと想う。
受け止めてくれると知ったから、湊に知って欲しいと想った。
私の顔を覗き込む湊は、とても柔らかい表情をしていた。
その顔が、私を安心させたい、と言っていた。
湊の細い背中に手を回す。
着ている服を掴んで、ぐっと力をこめた。
それを感じた湊は、私を抱き締めている手に強く力を込めた。