だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
「此処にいるよ」
「私も、ずっと此処にいるよ」
「そうか、嬉しいな」
「・・・私も、とても嬉しい」
胸に直接聞こえた声が、身体をめぐる。
深く染み渡るように、しっかりとかみ締める。
湊の言葉に応えて、笑った。
この言葉が、今この瞬間、絶対に嘘ではないと伝えたかった。
きっと今、私達の間は同じ想いが流れている。
それは、今までは感じることの出来なかったものだと思った。
今までよりももっと。
今までよりもずっと。
そして、これからも。
触れるだけで、全てが伝わる気がした。
今まで不安に想っていたことが、本当にどうでもいいことのように思えた。
湊が何を考えているのか、知りたくて。
勝手に一人で不安になって。
自分と同じ気持ちでいてくれるかどうかを、疑って。
けれど、そんなことをする必要がないと分かったから。
湊の心の声が、聞こえたから。
別々なモノであるはずの私達の気持ちは、溶けて一つになりたいと言っていた。
そんなこと、不可能だと知っていて周りから見れば馬鹿なことでも。
湊も同じ気持ちでいてくれることが、私にとってはこの上なく嬉しいことだった。
目の前にあるのは、色褪せてゆくものなんかではない。
写真なんて、いらない。
想い出なんて、いらない。
証拠なんて、いらない。
今、目の前にあるぬくもりだけが、たまらなく大切だった。