だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版

輪廻...リンネ







――――――――――――――……
―――――――――――――……




「しぐれ?大丈夫か?」


「平気です。ちょっと、雨を見てただけなので」




ぼんやりとしたまま窓を見ていた私を心配して、櫻井さんは赤信号でこちらを向いていた。

そっと応えて、笑って見せる。

車は私のマンションに向けて、真っ直ぐに進んでいた。

家までは、あっという間に着いてしまうだろう。


その前に、櫻井さんとはきちんと話をしたいと想っていた。




「櫻井さん、少し時間ありますか?ちょっと、お話がしたいんですけど・・・」


「車の中でもいいか?店とかだと、お前の体も疲れるだろうし」




隣で、少し空気がぴんと張るのを感じた。

何を話したいのか、櫻井さんにはわかってしまったのだろう。




「わかりました。でも、家の前はちょっと・・・」


「わかってる。少し寄り道するぞ」




言うが早いか、ウインカーをあげて来た道を戻って行く。

車は雨の中を滑らかに走っていた。



さっきまでいた会社も通り過ぎて、どこへ向かっているのかわからなかったが、今聞くのは気がひけて櫻井さんの運転に身を任せていた。




< 175 / 188 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop