だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
輪廻...リンネ
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「しぐれ?大丈夫か?」
「平気です。ちょっと、雨を見てただけなので」
ぼんやりとしたまま窓を見ていた私を心配して、櫻井さんは赤信号でこちらを向いていた。
そっと応えて、笑って見せる。
車は私のマンションに向けて、真っ直ぐに進んでいた。
家までは、あっという間に着いてしまうだろう。
その前に、櫻井さんとはきちんと話をしたいと想っていた。
「櫻井さん、少し時間ありますか?ちょっと、お話がしたいんですけど・・・」
「車の中でもいいか?店とかだと、お前の体も疲れるだろうし」
隣で、少し空気がぴんと張るのを感じた。
何を話したいのか、櫻井さんにはわかってしまったのだろう。
「わかりました。でも、家の前はちょっと・・・」
「わかってる。少し寄り道するぞ」
言うが早いか、ウインカーをあげて来た道を戻って行く。
車は雨の中を滑らかに走っていた。
さっきまでいた会社も通り過ぎて、どこへ向かっているのかわからなかったが、今聞くのは気がひけて櫻井さんの運転に身を任せていた。