だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
「どうして、湊を知ってるんですか?」
絞り出した声は、そんなことしか聞くことが出来なかった。
もっと聞きたいことは山ほどあるのに、それは上手く言葉にならなかった。
「湊さんは、大学の先輩だった。一番仲が良かった、卒業してからもな。いつも二人でつるんでた」
「そう、だったんですか」
「だから本当はお前が妹だって、分かってたさ。悪かったな、この前は」
「・・・いいえ」
初めて知った。
湊を知っている人が、こんなにも身近にいたなんて。
「いつも聞いてた。しぐれって名前の妹がいるって。でも、一度も逢わせてくれなかった。冗談っぽく『誰にも逢わせるもんか』って言ってた」
湊。
義理妹の私のことをそんな風に言ってくれていたの?
ただの義理兄バカじゃない。
私は、音もなく泣いていた。
「可愛くて仕方ないんだろうな、って思ってたんだ。二人を見かけるまでは」
「え・・・?見かける?」
ということは、私と湊が一緒にいるのを見たことがあるってこと?
それはいつのことか、全く想像もつかなかった。
なぜなら、私たちはなるべく遠くへ行かない限り、外に出る事はしなかったからだ。
それ以外の時は、真夜中に散歩をしていた。
人がいない時間にだけ、私達は恋人として一緒に歩くことが出来たから。
なのに、どこで?