だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
春から夏に季節は巡る。
春。
仕事に悩み、なかなか没頭できずにいた。
必要とされているか、自分でわからなくなっていた。
けれど、ことあるごとに先輩や同僚に支えられていることに気が付く。
チームのメンバーに必要とされることで、自分の居場所を確認していく。
そんな中。
雨が降るたびに想い出す。
時雨の心を揺るがす人物。
自分より少しだけ高い肩。
やわらかい髪。
小さな耳。
薄い色素の瞳。
長い睫。
細い身体。
大きな手。
低くよく響く声。
湊のことを。
櫻井さんの背中や言葉に、反応するように想い出すこともある。
仕事に揺れる。
想い出に揺れる。
目前にはブライダルフェアが差し迫っていた。
夏。
胸の奥が、ざわざわしている。
この気持ちが、動く日がくるのかな。
ねえ、湊。
今でも想い出すことが沢山あるよ。
大切なものを探して、今日も『今』を生きるOLの物語、第二章。