だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
会長の言葉に、大きな歓声と拍手が贈られる。
さっきまでの大変さが、この一言でどうでもいいことに思えた。
こんなにも達成感を与えてくれるこの人の声。
どれだけの苦労を、この会長はしてきたのだろう、とぼんやり考える。
私達には想像もつかないが、こんな素敵な人になりたいと思う人は少なくないのだろう。
その裏にある多くの努力が、目の前に立っている一人の女性を輝かせている。
私や水鳥さんのようにサポートをこなすタイプではなく、自分自身で輝きを放つ人。
「ここで、労いを込めて皆様にプレゼントをご用意しています。スタッフの女性のためにドレス試着を行ないたいと思います。もちろん、スタイリストとモデルの方々にも、お手伝い頂きますから」
あちらこちらからキャーっと歓声が上がる。
ジュエリーメーカー主催ということもあって、普段ではお目にかることの出来ないような高価なドレスもあった。
もちろん、ドレスに合わせて沢山の宝石も試着できるらしい。
「さっきまでの裏方が主役になれる。これが、このイベントの最大の『サプライズ』ですわ」
こんな機会はめったにない事はすぐに理解出来た。
けれど、なんだか恥ずかしさの方が勝ってしまって素直に喜べずにいた。
「一緒にドレスを選びましょう」
突然、隣で囁かれてドキッとしてしまう。
水鳥さんは気配を感じさせないように近づいて来たに違いない。
悪戯をした後の水鳥さんは、いつにも増して艶やかな笑顔だ。