だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
ステージでは記念撮影用にセットが用意されていた。
そこまで用意されてることに、嬉しいやら、悲しいやら。
舞台袖でそれを見て、一つ深呼吸をする。
ここまで来たのだから、諦めるしかない。
水鳥さんと一度顔を合わせて、二人でステージに向かった。
ステージには全員集合しており、他にもディレクターと第二本部にいた男性スタッフさん達もいた。
ゆっくりと現れた私と水鳥さんを見て、全員が固まった。
水鳥さんはにっこり笑って返したが、私はなんだかいたたまれなくなって俯いてしまった。
水鳥さんと並ぶなんて、拷問以外の何物でもない。
「いかがかしら?男性諸君」
水鳥さんの声を聞いて男性陣に目を向ける。
揃いもそろってぽかんとした間抜けな顔をしている。
にこにこと笑っているのは尾上部長とディレクターの二人だけだ。
益々、不安は募るばかりだった。
「さすがだな、水鳥嬢。お見事」
「光栄です」
尾上部長が水鳥さんに向かって左肘を差し出す。
満足そうにその腕に自分の腕を滑り込ませて、水鳥さんは記念撮影に向かった。
まるで本物の恋人同士のように。
水鳥さんは歩いていってしまったのに、まだ目線が突き刺さっている。
誰も何も言ってくれないので、息が詰まってしまいそうだった。