だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
「すっげぇ・・・」
間抜けな声を出したのは松山だった。
不安なまままっすぐ松山を見つめると、肩を強張らせ顔を真っ赤にしてしまった。
他のみんなを見回すと、みんな私と目を合わせてくれようとしない。
唯一凝視しているのは櫻井さんだけなのに。
その人に至っては放心状態で、さっきまでてきぱき仕事をしていたとは思えない顔つきだ。
口が開いたまま、只々私を見つめ続けるその人の目に、何の感情も見つけられなかった。
「似合いま・・・せんか?」
私は何がなんだかわからない状態で、首を傾げた。
自分の中では、それなりに悪くないと思ったけれど。
やっぱり周りの人から見ると、違うのかな、って。
やっぱり、似合わなかったのだろうか。
「時雨さん、めちゃくちゃ似合ってますよ!ほんと、いつもからは想像出来ないほど、本っっ当に綺麗ですよ!」
「いや、お世辞抜きで凄いですね。なんか、直視できないほど綺麗です。うわー・・・」
松山と篠木が今までに見たことのない顔をしている。
その顔は、明らかに私を意識して赤くなっている気がした。
そんな反応にどう返していいかわからずにいると、森川がすっと手を差し出してくれた。
「似合うじゃないか。でも笑え。」
そうぶっきらぼうに言いながらも、嬉しそうに笑っていた。
差し出された左手は私が腕を組みやすいように、しっかりとスペースを開けてくれていた。
まるで、ここに来い、というように。