だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
その腕にするりと自分の右手を滑り込ませる。
森川と腕を組むなんて初めてで、なんだか気恥ずかしい。
「見違えましたよ。山本さん、やっぱりお綺麗ですね」
「ほんとに。また、エスコートする男性陣もイイ男揃いですもんね。悔しいですけど」
ディレクターさんや他の男性スタッフさんも口々に私を褒めてくれた。
なんだか照れくさくなって上手く笑えなかった気がするけれど、とても嬉しかった。
ステージの撮影セットに向けて歩き出す。
少し背の高い森川の横顔は、満足そうに笑っていた。
それにつられて、私も自然と笑顔になる。
自分が生まれ変わったみなたいな感覚。
そんな風に感じた。
櫻井さんの横を通る時、森川に絡めた腕を掴まれた。
私も森川もびっくりして櫻井さんを見つめる。
「次のエスコートは、俺がする」
真剣な顔で言うことだろうか。
思わず森川と顔を合わせて吹き出した。
真っ赤な顔で必死の櫻井さんは、みんなに爆笑された。
結局記念撮影はみんなで取ることにして、チームのみんなとディレクターさん達が私と水鳥さんを囲んでいる形になった。
なんだか嬉しくなって、気付けば満面の笑みになっていた。
「シグは自分に自信を持つことが一番ね。本当によく似合っているわよ」
着替えに戻る途中、水鳥さんに声を掛けられた。
魔法の言葉のように胸にすっと落ちたその響きに、やっぱり幸せだと思って微笑んだ。