だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版




「古いものは、親から子へ。新しいものは、現在から未来へ。借りたものは、人から人へ。青いものは、不変・純潔の証」




繋がる連鎖の仕組みが見える。

人は、繋がり紡ぎ、不変であると。

いつまでも清くあれ、と。

教えてくれるようだった。



なんて神聖な響き。

確かにただの言い伝えかもしれないけれど。

それでも、人は必ず何かに繋がり、変わることなく綺麗なものである、と。

そう教えてくれるようなものだった。


湊の声が胸に落ちる。

またひとつ、想いが溜まる。





「時雨はきっとよく似合うんだろうな。いつか、身につける日が来るのかな」




湊の声が。

湊の想いが。

少しだけ翳るのを感じた。


掴んでいた右手を離す。

力の抜けた湊の左手は、びくりと怯えている。



自分の左手でぎゅっと湊の左手を握り締める。

離したりしない、というように。

右手を湊の腕に滑り込ませる。

絡まってしまえばいいのに、と想いながら。




「いつか身につけて目の前に立つよ。湊の瞳に映してもらうために」


「それは、プロポーズ?」


「そんなものが、必要なら。何度でも言うよ」


「いや。そんなものは、要らないよ。時雨がいるだけで、十分だから」




そっと、湊の肩に頭を寄せる。

私の頭に柔らかい湊の髪が触れた。


湊はそっと頷いた。

優しい息遣いが、私の胸に響いていた。




いとしい、と。




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