だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
朧...オボロ
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ステージでどっと疲れたのか、スーツに袖を通した時にはもうクタクタだった。
ご満悦の表情を浮かべる女性スタッフ達を見て、自分の女度はやはり低いのかも、と思った。
「山本さん、少しいいかしら」
水鳥さんがよそゆきの声で私の名前を呼んだ。
それだけで、クライアントの前に出ると判ったので身支度をしっかり整えた。
名刺の準備をして、水鳥さんの所へ急いだ。
「こちら、今回主催のBijou-brillant(ビジュ・ブリアント)会長の御堂蒼(ミドウアオイ)様。御堂様、こちらが来年のメインアシスタント、山本時雨ですわ」
「ご紹介に預かりました、山本と申します。お初にお目にかかります」
「あら、ご丁寧にありがとう。Bijou-brillantで会長をしております、御堂と申します。可愛らしい方ね」
「御堂様は、尾上部長と古いお付き合いでいらっしゃるのよ」
「そうでしたか。では部長がかなり若い頃から、という事でしょうか」
「そういうことに、なりますわね」
ぱりっとした小柄な女性。
けれども、身に纏うオーラは貫禄以外の何者でもない。
近くで見ると少し年齢を感じるけれど、まだまだ現役でいらっしゃるその姿は、女性の鏡のように思えた。