だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
「水鳥さんからお話は伺ってますよ。想像よりもずっとしっかりしていらっしゃる」
「恐れ入ります。ですが、そんなこともないんですよ。南が何を言ったのか存じませんが、まだまだ未熟者ですし」
「まぁ、ご謙遜を」
「いえ、本当のことですから。それとこの度は、このようなご配慮まで頂き、誠にありがとうございました」
「とんでもない。皆さんのおかげですから。楽しんでいただけました?」
「ええ、とても」
水鳥さんは一体、会長にどんなことを話していたのだろう。
クライアントにも物怖じせずいつもの態度で対応していたことが、目に浮かぶようだった。
会長はじっと私を見つめたまま、にっこりと笑っていた。
「第一印象は、最初の瞬間に決まるのよ。いい仕事をしているのね」
観察力、洞察力、判断力。
一瞬で全てを見抜かれた感覚を持った。
鋭利なナイフを突きつけられたような緊張感。
けれど、その人の心に映る私は、それなりに印象を与える存在らしかった。
「どの方も優秀な方ばかり。最初はあまりに少ない人数編成で驚いたけれど、納得したわ。尾上さんと水鳥さんの言う通り、素晴らしいチームなのね」
「自慢のチームですわ」
穏やかに、それでいて試すように微笑んで、御堂会長が水鳥さんを見る。
負けず劣らず優雅に微笑んだ水鳥さんは、自信に満ちた表情で頷いていた。