だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
「来年ご一緒出来るのを、楽しみにしています」
「こちらこそ。ご期待に沿えるよう櫻井と作り上げていきます」
「頼もしいですわ。ねぇ、水鳥さん」
「ええ。御堂会長の御眼鏡に適って、何よりですわ」
「酷い言いようね」
「お厳しいからじゃありませんか」
「お互いに、ね」
くすくすと笑う大人の女性に挟まれて、小さく身を竦める。
けれど、この人達と肩を並べて仕事がしたいと想った。
それは、私の小さな成長でもある様な気がして、とても嬉しかった。
「期待しています」
一言だけ残して、御堂さんは次の仕事に向かって行った。
穏やかなはずなのに張り詰めていた空気。
それが緩んだ瞬間、私はほっと息を吐いた。
「突然ごめんね。御堂さんがどうしてもシグを見てみたい、っておっしゃったから」
「驚きましたよ。迫力のある方ですねぇ」
「でも、とってもチャーミングな方なのよ」
「はぁ・・・。でも、どうしてアシスタントの私を?」
純粋な疑問だった。
尾上部長や櫻井さんに会いたいというなら判るが、アシスタントの私に会って何があるというのだろう。
確かに来年はメインスタッフかもしれないけれど、それでも裏方には変わりないはずなのに。
「スタッフの女の子達が、シグのことを褒めていたからよ」
意外な一言だった。
無我夢中だったので、褒められる事なんてきっとしていないと思うのに。