だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
廊下に出ると雨の気配を感じた。
湿った空気は、梅雨がやってくることを教えてくれた。
「今日はこの後打ち上げだから、まずは、みんなと合流しましょう」
「はい」
水鳥さんがそう言って、携帯を取り出す。
尾上部長に連絡をして、男性陣はメインロビーに向かっているところだと教えてくれた。
歩いていれば合流出来るたろうと、二人で並んでロビーに向かう。
気持ちが浮き立つのを抑えることは、出来なかった。
「お疲れ様です!」
後ろの廊下、それもかなり遠くから、松山の大きな声が響く。
あんなに仕事をした後なのに、どうしてそれだけの元気が残っているのか不思議でたまらなかった。
その後ろには、営業がみんな並んで歩いてくる。
疲労感はあるものの、充実に満ちた顔をしている営業達。
全く。
『みてくれ』だけはイイんだから。
「お疲れ様!元気だね、松山!」
「これしか取り柄、ないッスから!!」
そんなことないよ、と思って小さく笑った。
周りのみんなは容赦なく『そうだな』と言って松山をからかっているけれど。
合流してロビーの外に向かって、みんなで歩く。
静かな雨が音もなく降り注ぐ。
優しい雨が、地面を濡らしていた。