だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版





――――――――――――――……
―――――――――――――……




「行くぞ。ぼーっとしてると置いてくぞ」




その声に反応して、櫻井さんを見つめる。

やっぱり、私の意識を現実に連れて来てくれるのは、いつもこの人の声だ。

少し心配そうな顔をしたかと思えば、私の方へにやりと笑いを向ける。

これから楽しいことが始まる、といわんばかりの顔で。




「明日、休みだったらよかったのにな」


「・・・そんなことになったら、うちのチームみんな潰れますよ?」


「違いない。水鳥さん、容赦ねぇからな」


「まぁ、多少ハメを外しても今日は怒られないんじゃないですか?」


「そうだな。今日の残務処理は、ほとんどないからな」


「楽しみましょう」


「おう」




明るい返事だ。

それは、心の底から櫻井さんが言った声で、なんだかとても嬉しくなった。


少し先を歩くチームのみんなの足取りも、心なしか嬉しそうだ。



静かに雨の降る、日曜日の夜。

チームのみんなの楽しそうな顔を見て、心を弾ませた。



今日の飲み会は、荒れ放題になること間違いなしだ。


それでも。

頬を上気させて笑う部長。

櫻井さんをいじり倒す水鳥さん。

そのフォローを楽しみにしている松山と篠木。

的外れな発言で後輩達に笑われる森川。

眠くなると、とても幼くなる櫻井さん。


それを想像して、笑いがこぼれる。



梅雨入りを感じながら、飲みすぎないようにだけ気を付けようと心に決めた。




< 44 / 188 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop