だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
――――――――――――――……
―――――――――――――……
「行くぞ。ぼーっとしてると置いてくぞ」
その声に反応して、櫻井さんを見つめる。
やっぱり、私の意識を現実に連れて来てくれるのは、いつもこの人の声だ。
少し心配そうな顔をしたかと思えば、私の方へにやりと笑いを向ける。
これから楽しいことが始まる、といわんばかりの顔で。
「明日、休みだったらよかったのにな」
「・・・そんなことになったら、うちのチームみんな潰れますよ?」
「違いない。水鳥さん、容赦ねぇからな」
「まぁ、多少ハメを外しても今日は怒られないんじゃないですか?」
「そうだな。今日の残務処理は、ほとんどないからな」
「楽しみましょう」
「おう」
明るい返事だ。
それは、心の底から櫻井さんが言った声で、なんだかとても嬉しくなった。
少し先を歩くチームのみんなの足取りも、心なしか嬉しそうだ。
静かに雨の降る、日曜日の夜。
チームのみんなの楽しそうな顔を見て、心を弾ませた。
今日の飲み会は、荒れ放題になること間違いなしだ。
それでも。
頬を上気させて笑う部長。
櫻井さんをいじり倒す水鳥さん。
そのフォローを楽しみにしている松山と篠木。
的外れな発言で後輩達に笑われる森川。
眠くなると、とても幼くなる櫻井さん。
それを想像して、笑いがこぼれる。
梅雨入りを感じながら、飲みすぎないようにだけ気を付けようと心に決めた。