だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
「あら、命懸けで付き合ってくれるのね。櫻井君は頼もしいこと。ねぇ、シグ」
「ほんとですね、水鳥さん」
目配せをしながら、横目に櫻井さんを見る。
バツの悪そうな顔をしながら言い訳を探しているが、水鳥さんのお誘いを断る方が怖いに決まっている。
覚悟を決めかねて唸っている櫻井さん。
追い討ちを掛けるように、尾上部長が櫻井さんを見つめた。
「明日は俺と水鳥嬢だけの出勤で十分だ。振り替え休日にしてやるから、全員で水鳥嬢に付き合うように!」
「「「「「えぇっっっ!!??」」」」」
全員ががばりと顔を上げて、目配せした。
とんでもない部長命令に困惑気味だが、折角の休日前。
水鳥さんに付き合っても明日は思う存分休めることが決まった。
飲み会の次の日が休み、なんて実は奇跡的なことで。
大抵、誰か一人くらい現場があるのだけれど。
平日のため、その稼働もない状態で休める、ということだ。
願ったり叶ったりで嬉しい反面、ケタ外れの水鳥さんに付き合うことは必須なのだ。
みんな頭の中で同じことを考えていると突然、森川が立ち上がった。
いつもより上気した森川の顔が、部長を見据えていた。
「ありがとうございます。では、心して水鳥さんと酒を酌み交わします」
森川らしい物言いで、その場を盛り上げた。
水鳥さんは満足そうに笑っていたし、尾上部長はご満悦だ。
森川の言葉に松山、篠木は覚悟を決めていた。
櫻井さんも同様だったが、楽しそうにけらけらと笑っていた。