だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版





森川が私の方を見て、自信満々に笑っていた。

櫻井さんは資料を抱えて、三人の目の前にある机に向かっていく。




「舞台袖でのエスコート役は、モデルの不安を取り除くのが第一。男の見せ所だから、精鋭部隊で頼んだぞ」




力強い櫻井さんの声に、三人は大きく返事をした。

それと同時に颯爽と歩き出すのを見て、はっと意識を取り戻す。



忙しすぎると頭がぼーっとして、一気にスイッチが切れてしまうことがある。

気を引き締めなければ。



うちの営業たちが凛々しい顔つきで、私の立っているドアに近づいてきた。

森川を先頭に松山、篠木、櫻井さんの順で。

ドアのところに立っている私に向かっ、拳を握り締めてグーを作る。

それに向かって、私もグーを作って合わせる。




森川が見せる、余裕な笑顔。

松山が見せる、ワクワクする表情。

篠木が見せる、真剣な眼差し。

一人ひとりと手を合わせて、三人を見送った。



今年はオフィシャルパートナーだけれど、来年は自分達が運営するのだ、と。

みんなが理解している。

みんなが考えている。


そういう空気を感じているからこそ、みんなが眩しく見えた。




< 5 / 188 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop