だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
「しぐれ、セクハラ」
・・・セクハラ。
その言葉に少なからずショックを受けている私に、森川が追い討ちを掛ける。
「二人は一応部下だろう?パワハラも」
・・・ぱわはら!
その瞬間我に返り、申し訳ない気持ちで二人を見つめた。
「ごめん・・・。思わずはしゃいじゃって・・・」
「とんでもないッス!むしろ役得というか・・・あの・・・ッ!」
「時雨さんから抱きついてもらえるなんて思ってなかったので!こんなことでもないと、あの・・・あれなんで・・・ッッ!」
なんだか二人とも、歯切れが悪い。
でも、セクハラもパワハラもないではないか。
むっとした顔で櫻井さんと森川を見つめる。
と、そこには。
にこにこと人の良い笑顔を浮かべながらも、目の奥が一つも笑っていない櫻井さんと。
ただでさえ表情がないのに、いつも以上に無表情の森川が立っていた。
見つめる先は私ではなく松山と篠木。
二人は、ゆっくりゆっくり私から距離を取り、ジリジリと感じる二人の視線から逃れようとしている。
「ちょっと、二人ともなんて顔してるんですか!松山と篠木が怯えてるでしょ!?」
「しぐれさん、大丈夫ですよ。俺ら気にしないので・・・」
「そうですよ。それに、しぐれさんが言うと火に油を注ぐというか・・・なんというか・・・」
「二人は気にしなくていいの!私が勝手にしたことなんだら!」