だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
「あれは、むしろ役得だ」
森川がぼそりと呟く。
「時雨にはアレが足りない」
「アレって、色気ってこと?」
「それ以外に何がある。お前は無防備過ぎるから、色気がない」
「何それ。ヒドイ言われようだね」
「・・・?無防備なことを自覚しろ、って言ってるだけだ」
真剣な顔で私に言う森川。
遠くで肩を震わせる尾上部長が見えた。
何事もなかったかのように、水鳥さんも席に着く。
くすくすと笑いながら。
櫻井さん、松山、篠木も、限界とばかりに吹き出した。
「ねぇ、これってさ」
「なんだ?」
「結局、私に色気がないのが問題なんじゃないの!!」
「まぁ、そうとも言う」
悔しくなって大声になった。
みんながゲラゲラと笑っている。
その笑い声にバカらしくなって、怒りもどこかへ行ってしまった。
「まだまだ飲むぞ。今日は楽しい打ち上げだからな」
尾上部長の言葉に、声をそろえて返事をした。
席について、一度グラスを掲げる。
楽しそうに笑うみんなを見て、私も一緒に笑っていた。
今日の飲み会は、喜怒哀楽の『喜』と『楽』しかない飲み会だ。
それを、みんなの顔が物語っている。
一度グラスを高く掲げて、みんなでゴクリと喉を潤す。
夜は長くなりそうだ。