だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
激励...ゲキレイ
「さて」
程よくお酒が入ってみんなが饒舌になった頃、尾上部長がすっと立ち上がった。
それは、お開きになる直前の合図で。
みんなそれを知っているので、部長の方へ向けて姿勢を正した。
「今日は本当にお疲れ様」
その一言はとても感情の込められた言葉で。
誰もがこの人の下で仕事をして良かった、と思えるような言葉だった。
尾上部長の労いの言葉は、魔法のように心に届く。
さっきまで騒がしかった個室の中は、周りの喧騒が際立つほど静かになっていた。
「水鳥嬢、エスコートお疲れ様。VIP対応を任せたら、右に出るものはいないと思う」
「光栄ですわ。御堂会長にもご満足頂けたようで」
「文句なしだな。任せて、本当に良かった」
尾上部長と水鳥さんが、目を合わせる。
いつも見慣れた光景のはずなのに、その二人の空気がとても親密に見えてハッとする。
息を呑むほどに。
「ありがとうございます。部長の下で働けて、本当に嬉しく思います」
「あぁ。こちらこそ、ありがとう」
立ち上がって礼をする水鳥さんは、映画の中から切り取られたように綺麗だ。
尾上部長は満足そうに頷いて、水鳥さんの肩をぽんっと叩いた。