だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
戸惑...トマドイ
お店を出て尾上部長と水鳥さんを見送った後、帰るのが名残惜しいのか、みんなで立ち止まった。
なんとなく目を合わせて顔を見合すと、それぞれ達成感に満ちた顔をしていた。
「飲み直すか?」
提案したのは櫻井さんだ。
誰も異論ないようで、一斉に頷いた。
「たまにはゆっくりウチで飲もうぜ。どっかもう一軒行ってもいいんだけど、みんなも疲れてるだろうから」
「櫻井さんがいいなら、是非」
同意を口にしたのは、森川だった。
確かに体はクタクタだ。
今日は体力を使う現場だったし、気を張っていたのは確かだ。
「じゃあ、移動しようぜ。タクシー捕まえる」
「俺達、買い出しして行きますよ」
「別に、家の近くのコンビニでいいぜ?」
「松山達の酔い覚ましも兼ねて、少し歩いて行きます。しぐれ、お願いできますか」
「あぁ、わかった。じゃあ、しぐれ連れて先行ってるぞ」
「お願いします」
櫻井さんが飲んだ後地下鉄に乗る、なんて選択肢を選ぶはずもなく。
有無を言わさずタクシーを捕まえて、すぐにそれに乗り込むことになった。
近くのコンビニでの買い出しでもよかっただろうに。
森川は本当に面倒見がいいんだから。
買出しは森川たちに任せて、私と櫻井さんは先に家に向かう。
雨は小降りになっていた。
タクシーに乗り込もうとした時、ぐっと手を引かれた。