だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
「森川、どうかした?」
二重になって垂れた目が、お酒が入っていることを物語っている。
森川だって疲れているに違いない。
じっと見ている森川に、首をかしげて話を促す。
「櫻井さんの家に足りないものがあったら、俺に連絡しろ。あいつらは、そろそろ頭回んないだろうから」
「あぁ、そうだね。はしゃいじゃって、仲イイんだから」
「俺らも仲イイだろ」
「男同士とは違う、とだけ言っておこうかな」
「そうか」
松山と篠木は、楽しそうに肩を組んでいる。
確かに、一番お酒が回っているのはあの二人だろう。
酒飲みばかりが集まるうちのチームは、飲み方を間違えれば一気に潰れてしまう。
「じゃあ、何かあれば連絡するね」
小さく頷いた森川を見て、ぺしぺしとおでこをはたく。
お酒を飲んだら饒舌になる森川は、少し話し足りなくてウズウズしているのかもしれない。
後で沢山話を聞いてあげよう、と思いながら櫻井さんの後についてタクシーに乗り込んだ。
濡れた路面を滑るように、タクシーは走り出した。
静かな車内には、ヴォリュームをしぼった音楽がラジオから流れていた。
懐かしい唄が、眠気を誘う。