だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
転寝...ウタタネ
しとしとと雨が降り続く。
六月も半ばを過ぎた頃、家のリビングで私は制服を着たままうたた寝をしていた。
ソファーが少しだけ湿っぽい感じがしていたけれど、頭の部分だけは温かい。
柔らかな感触に、ぎゅっとしがみついた。
髪の毛を梳くように、冷たい指がなぞっていた。
時折、頬に触れる指の感触に安心感を覚えて、思わず頭の下の太ももを抱えた。
目のすぐ近くに柔く触れるそれを確かめようと、必死に目を開けた。
まだぼやけた目線の先の人物を確かめて、また目を閉じる。
「・・・み、なと」
夢うつつに、その名前を呼ぶ。
くすりと笑う気配とともに、影が近づいてくるのがわかる。
「時雨。あんまり起こしたくはないんだけど、着替えないと制服が皺になるよ」
「ん・・・」
そっと私に告げる湊は、本当に私を起こすつもりなんてないのでは、と思う。
前かがみに私の頭を抱きかかえて、優しく撫でてくれる。
時折降ってくる優しいキスに応えたくて、顔を上に向けた。
しょうがないな、というように鼻先に柔らかさを落とした後、唇が軽く触れる。
湊が落とす触れるか触れないかのキスは、私の心をいつも切なくさせた。
瞼に、頬に、睫毛に落ちる湊の唇。
言葉がなくても、湊が言いたいことが胸に届いていた。
『いとしい』と。