だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
「時雨は雨になると、いつも寝てしまうね」
そう言った湊は、とても楽しそうだった。
私は、雨の気配がするといつも眠気に襲われるのだ。
それは雨の湿度だったり、静けさだったり、規則的な雨粒の音だったり。
雨を感じることが出来るようになったのは、この体質に気付いてからかもしれない。
「ちゃんと着替えておいで。そしたら、また膝を貸してあげるから」
「ん・・・、もうちょっと」
「仕方がないな。じゃあ、あと少しだよ」
そう言って、一度ぽんと頭を叩かれた。
手のひらを乗せるようにして。
その時、ふと、どうして湊の膝枕で寝ているのか疑問に思った。
今日は水曜日で、湊は会社に行っているはずなのにどうして家のリビングにいるのか。
だって、時間はまだ午後四時だ。
世間一般の会社員は、まだまだ仕事真っ只中のはずじゃないか。
驚いて、がばりと起き上がる。
湊もびっくりした顔をして、ソファーの背もたれていた。
湊の方へ顔を向けて、少し怒った顔をしてみせた。
私の目線に驚いているようだけれど、何にも動じないのが湊。
余裕の表情をされていることさえ信じられなくて、私はその綺麗な顔を睨み続けた。