だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版





湊はたまに、ふらりと家に帰ってきたりする。

なんでこんなに早くに家にいるのか、と訪ねると、決まって『サボっちゃった』と可愛く言われてしまう。



社会人なのに、どうしてそんなにサボれるのかしら。

そう思ったけれど、高校生の私には仕事がどういうものか判らなかったので聞かないでおいた。


聞いたところで理解できないほうが、私には悲しいことだったから。




「着替えてくるね」




湊のおでこに軽くチュッと口づけて、二階に向かう。

右手に鞄、左手に紺色のブレザーを持って。

スカートを一度ぱんっと伸ばして、階段へ続くドアを開けた。



私の部屋は、湊の部屋の隣にある。


一緒に暮らし始めて、もうすぐ十二年。

干支が一回りするなんて、時間が過ぎていくのはとても速い。

せっかく高校生になって少しは湊に追い付いたと思ったら、湊はあっという間に社会人になってしまった。



広告代理店でシステム管理をしている傍らで、webデザイナーも兼業しているらしい。

デザイナーの仕事は自宅で時間がある時にやっているらしく、自分の会社の専属なのだそうだ。



仕事のことは聞いてもあまりわからないので、正直なところどのくらい忙しいのかさえわかない。

けれど、湊は比較的早く家にいたりお休みもしっかりとあるみたいだ。




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